| まとめのトキー
全国書教研連盟会長 村上美碩
三月。厳しかった寒さがゆるみ、土の中から新たない
のちが息吹き始める季節です。
啓蟄の候、目に見えぬところで起こる変化は、書写書
道に向かう私たちの心の動きにも重なります。そして卒
業や進級進学、新しい生活に向け、これまでがんばって
きたことを振り返る月です。
心を澄ませ、呼吸を整え、紙と向き合う。上手く書け
た文字も、思うように書けなかった点画もすべてが大切
な経験だったと思います。筆先に宿るのは、技だけでは
なく、その時々の心境や生き方そのものです。
三月は別れと出会いの月。旅立ち、新たな一歩――
その節目に、今一度、筆を正しく持ち、姿勢を整え、書
と静かに向き合い、内なる声を映し出してみましょう。
変化の季節だからこそ、原点に立ち返り、線の質を見つ
め直したいものです。
揺らぎの中にこそ生まれる、しなやかな強さ。春を迎
える、これからの歩みを照らすしるべとなることを願っ
ています。
第四十回全国書写書道展覧会が、昨年と同様の文京シ
ビックセンター展示室一階で、九月十九日(土)二十日
(日)に開催の予定です。表彰式は二十日(日)を予定
しております。
さあ、二〇二六年もチャレンジしましょう。
条幅作品の解説
阿 保 幽 谷
○作品―菊 花 寿
○書体―行書
○読み方―菊花の寿(きっかのじゅ)
○意味―菊花のお祝い。昔は九月九日を重陽の節句といった。旧暦で菊の節句である。
○学び方
● 心構え―現在では、菊の花といえば十一月三日の文化の日に行うことが多い。花
がきれいなばかりではなく、花の寿命が長い。
昔、中国では菊の花の上にまわたを薄くかけ、それについた露をのむと長生きが
できるといわれ、日本にも伝わった。このように菊の花は長生きに通ずる。人間
は誰でも長生きがしたい。したがって長生きをする人を祝うと同時に、菊の花の
祝いでもある。すなわち、菊花は長寿をあらわす。この気持をこめて書いてみた
い。
● 全体のまとめ方―はじめの文字を小さめに、次第に大きくして「寿」は思いきっ
てたて長に書く。また、余白を十分にとり、バランスよくまとめること。
● 文字の組み立て方―「菊」はこじんまりとまとめ、「花」は下の方が幅広くなる
ように書き、「寿」は、たて長にして最後の線は思いっ切り力強く左下へ押し出
すようにするとよい。
● 筆づかい ―(用筆法……線の書き方)
一字一字、一つの線ごとにしっかりと押さえ、はねるところはしっかりと押さえ
てから、ほ先が先にいくように運ぶ。
また、同じ方向の線は平行にならないように、方向に変化をつけ、線の長さも変
化をつける。
● 墨色と墨つぎ―墨色は濃く、墨つぎは「菊」と「寿」の二回で書く。
● 用具―筆は、書き初め用の大筆で、署名も同じ筆。
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